贋作ゲーム

本作は、見事な緻密さと行動力で、不可能とされる事件に挑む男たちの姿を描いた傑作短編集です。各作品のプロットは緊張感に満ちており、読者を最後までハラハラドキドキさせてくれます。

「贋作ゲーム」

この物語は、平凡な美術評論家が主人公です。彼は突然、17世紀の神秘的な画家・オイレングラスの作品を手に入れる機会に恵まれます。しかし、その絵画はコンピュータで管理された貨物列車で運ばれるという、前代未聞の状況に彼を置きます。主人公は一筋縄ではいかない状況に直面しながらも、ある計画を立てます。この話は、知恵と創造性が試される冒険へと読者を引き込みます。最終的などんでん返しは、まさに心理戦の妙を極めたものです。

「スエズに死す」

ここでは、警視庁の爆発物処理専門の班長が主人公となります。彼の娘が人質に取られ、彼はパレスチナ解放人民戦線の要求に従わざるを得なくなります。その任務は、スエズ運河に設置された排除不可能とされる機雷「プッシー・キャット」を無力化すること。この物語は、敵と味方の境界が曖昧になりながら、共通の目的のために一致団結する過程を描きます。結末に向けての伏線も巧みに配置されており、読者を驚かせます。

「エアーポート・81」

本作は、出来損ないのハイジャック映画製作の過程で、カメラマンの主人公が実際にハイジャックを強いられてしまう、ユーモア溢れる作品です。一転してハイジャッカー役を演じることになった主人公の落ち着きのなさと、ハイジャック計画への逐次の巻き込まれ方がコミカルに描かれています。そしてラストは前代未聞の驚きのオチで読者を唸らせます。

「ラスト・ワン」

最後に紹介するのは、愛する女性のために金融事務所の金庫から金を盗もうとする建築家の話です。金庫はタイム・ロックで保護されており、一日に一度しか開かないという厳重なセキュリティが施されています。この物語は、愛と犯罪の間で揺れる男の心理と、彼が設計したビルを利用した緻密な計画を描きます。主人公の過去のトラウマとその克服が物語に深みを加え、読者に強い印象を残します。

「贋作ゲーム」は、一見不可能に思える事態に立ち向かう男たちの知恵と勇気を鮮やかに描き出しています。各作品の緊迫した展開と驚きのラストは、読者を飽きさせることなく最後まで胸を踊らせてくれます。緻密に練り上げられた作戦の数々と人間ドラマの見事な融合は、本作品を襲撃小説の傑作と言えるものにしています。書き手の想像力と筆力の高さに脱帽する作品集といえるでしょう。

実行不可能な作戦を数人のチームが達成する、という **ケーパーストーリー（襲撃小説）** を日本でいち早く宣言して書かれた本書をぜひ手に取って下さい。