
叢書 | 初版 |
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出版社 | 徳間書店 |
発行日 | 1995/01/31 |
装幀 | 矢島高光 |
内容紹介
あらすじ
ティーン向け雑誌で「夢島郵便局の郵便屋さんに手紙を出せば恋が叶う」と紹介されたことがきっかけで、郵便局員・早瀬邦夫のもとには連日手紙が届く。
そんな中、早瀬は配達途中に何者かに襲われ、制服を奪われるという事件に巻き込まれる。さらに、彼の同僚である郵便配達員が"歩道橋の上"で死亡しているのが発見された。しかし、通報者が警察を呼びに行き戻ってくると、死体は"歩道橋の下"に移動していたのだ。
**誰が、なぜ、どのようにして死体を移動させたのか?**
そして、"郵便配達は二度死ぬ"というタイトルの意味とは?
「郵便配達は二度死ぬ」の魅力
1. 死体移動という奇妙な謎
ミステリにおいて"死体移動"は古くからあるテーマだが、本作ではそのトリックが特に異質だ。登場人物の証言と客観的な事実が微妙にずれ、事件がどこか現実離れして感じられる。この幻想的な雰囲気こそが、本作を単なる"ロジックミステリ"にとどめない要素となっている。
2. 童話的な幻想と、えぐり出される現実
作中には「イスタンブールの盗賊」という童話が登場し、それが事件の鍵を握る。山田正紀はこうした"現実と幻想の交錯"を得意とする作家であり、本作も例外ではない。夢見がちなティーン向け雑誌の伝説が引き金となり、現実の悲劇へと発展するという対比が印象的だ。
3. 一人称と三人称が混在する独特の構成
本作は、一人称視点と三人称視点が入り混じる構成になっている。読者は早瀬邦夫の視点で事件を追うが、同時に外部から客観的な情報も与えられる。この切り替えが、"探偵自身が巻き込まれる"というサスペンスを効果的に演出している。
4. 名探偵不在のミステリ
本作には、典型的な名探偵は登場しない。むしろ、事件に巻き込まれた郵便配達員・早瀬が探偵役を務めることになる。しかし、彼は明確な推理力を持つわけではなく、読者とともに迷いながら真相に近づいていく。この点が、本作をより"読者参加型"のミステリとして面白くしている。
賛否が分かれるポイント
本作は独創的なアイデアが光る一方で、やや癖の強い作品でもある。
賛
- ✅ 予測不能な展開と、幻想的な雰囲気
- ✅ 死体移動という不可能犯罪がテーマ
- ✅ 伏線が散りばめられた緻密な構成
否
- ❌ 名探偵不在で、読後にすっきりしない部分がある
- ❌ トリックが複雑で、理解しにくい箇所がある
- ❌ 終盤の展開がやや唐突
本作を"名作"とするかどうかは、読者の好みに大きく左右されるだろう。しかし、少なくとも一度は読んでみる価値のある異色ミステリであることは間違いない。
おわりに
『郵便配達は二度死ぬ』は、単なる"死体移動トリック"のミステリではなく、幻想と現実が交錯する不思議な読後感を持つ作品だ。読者によって評価が分かれる部分もあるが、山田正紀の世界観を味わうには最適の一冊だろう。
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