影の艦隊7 -さらば艦隊-

叢書TOKUMA NOVELS
出版社徳間書店
発行日1995/04/30
装幀草彅琢仁、矢島高光

内容紹介

「影の艦隊7」解説記事

紹介

「影の艦隊7 さらば艦隊」は、山田正紀が描く架空の歴史と戦争をテーマにしたSFシリーズの完結編です。本作は、第二次世界大戦後の世界を舞台に、謎の艦隊「影の艦隊」を巡る壮大な物語を締めくくります。物語は、日本群島人民共和国という架空の国家が、冷戦下のカンボジア情勢に巻き込まれる形で展開します。ヴェトナム戦争の終結後、アメリカとソ連が互いに牽制し合う中、カンボジアのポル・ポト派が勢力を拡大。そこに突如として浮上した日本群島人民共和国は、米ソ双方から無視されてきた存在ながら、国際的な注目を集める重要な存在となります。そして、「影の艦隊」は正義の名の下に戦場へ向かうものの、世界から誤解され、孤立無援の戦いを強いられるのです。

シリーズを通じて描かれてきた「影の艦隊」は、第二次世界大戦の遺物である旧式艦艇でありながら、現代の戦争に介入し続ける異端の存在です。しかし、最終巻ではジェット機や最新兵器を前にその力も限界を迎え、壊滅の危機に瀕します。そこに現れる謎の戦艦、そして突然の終幕——物語は、現実と夢の境界を曖昧にしたまま読者を置き去りにします。

感想

「影の艦隊7」は、シリーズの終わりとして期待と困惑を同時に呼び起こす作品です。まず印象的なのは、物語の舞台がカンボジアとポル・ポト派に設定されている点。冷戦の複雑な国際情勢を背景に、歴史の闇に光を当てる試みは興味深いものの、なぜこの地点で物語を終えるのか、その意図が完全には伝わってきません。ポル・ポトによる虐殺が影の艦隊の仕業と誤解される展開は、戦争における正義と誤解のテーマを浮き彫りにしますが、その後の展開があまりにも急で、消化しきれなかった感が残ります。

シリーズ全体で積み上げてきた謎やテーマ——影の艦隊の正体、歴史への介入の意味——が、最終巻で明確な答えを見せないまま終わるのは、山田正紀らしい挑戦的な手法とも言えますが、読者としてはもう一歩踏み込んだ解決を期待したくなります。

考察

本作の魅力は、むしろその未完の感覚にあるのかもしれません。例えば、終盤に登場する「謎の戦艦」は、影の艦隊を救う救世主なのか、それともさらなる破滅の象徴なのか、解釈が開かれています。また、物語の最後が「1945年の上野の地下道で復員兵が見ていた夢」として終わる可能性を示唆する点は、山田のSF的手法の真骨頂です。

確かに彼の作品には一貫して「答えを明示しない」姿勢が感じられます。この終わり方は、読者に想像の余地を残し、物語を頭の中で続けさせる仕掛けなのかもしれません。しかし、シリーズを通して追い続けたファンにとっては、やや唐突な終幕に肩透かしを食らうのも事実です。

「影の艦隊」シリーズは、彼の多ジャンルにわたる創作活動の中でも特に歴史とSFを融合させた意欲作であり、その終わり方に賛否が分かれるのも納得できる部分があります。

結び

「影の艦隊7 さらば艦隊」は、山田正紀の想像力と挑戦が詰まったシリーズの掉尾を飾る作品です。結末に物足りなさを感じつつも、その曖昧さこそが本作の深みであり、読後に残る余韻がこの物語の真価なのかもしれません。あなたはこの終わりをどう受け止めますか?