魔境(カーフ)密命隊

叢書FUTABA NOVELS
出版社双葉社
発行日1985/10/25
装幀生頼範義、岸顕樹郎 + 菊地信義

内容紹介

ストーリー:失われた秘境「カーフ」への旅路

あらすじ

物語は、奈良の正倉院に保管されているペルシア絨毯に隠された謎から始まります。この絨毯は、かつて栄華を誇った秘境〈カーフ〉への地図であることが判明します。主人公の佐嶋は、砂漠で出会った妖艶な女性の記憶を追い求め、探検隊を結成します。探検隊には、美少年・秀美、人類学者の小百合博士、謎めいた狙撃手・斑鳩、そして現地案内役の元ベトナム難民スンが加わり、一行は未知の砂漠地帯へと足を踏み入れます。

イラン砂漠を舞台にした壮絶な旅では、イラン軍の妨害、厳しい自然環境、そして次々と立ちはだかる謎が一行を待ち受けます。そして、最終的にたどり着く秘境「カーフ」では、伝説とされていた“竜”の姿を目の当たりにします。そこで明かされる「竜の涙」の真実とは……?

舞台設定

山田正紀の筆致は、砂漠という過酷な環境を緻密に描写することに優れています。本作では、イラン砂漠の荒涼とした大地、星明りに照らされた静謐な夜、灼熱の太陽が照りつける日中など、自然の壮大さと美しさが存分に描かれています。また、〈カーフ〉という隔絶された場所の描写は、読者に異世界に迷い込んだような感覚を与え、幻想的な冒険の雰囲気を高めています。

主要登場人物の魅力

主人公・佐嶋
主人公の佐嶋は、過去に砂漠で出会った謎の美女への執着心を抱えた男。その執念は、自身の命を顧みず冒険へと突き動かす原動力となっています。一見すると冷静な探検隊のリーダーですが、内面では複雑な感情と欲望が渦巻いており、読者は彼の心理描写に引き込まれるでしょう。
美少年・秀美
秀美は、探検隊の中でも異質な存在で、その美貌と神秘的な雰囲気が物語に彩りを添えています。彼の行動や言動は一見予測不能であり、物語に緊張感を与える要素となっています。
小百合博士
人類学者である小百合博士は、学者らしい知的な側面と、冒険者としての大胆さを兼ね備えたキャラクターです。彼女の専門知識は物語の科学的な部分を補完するだけでなく、ストーリーをより深みのあるものにしています。
謎の狙撃手・斑鳩
斑鳩は、無口で寡黙な一匹狼のような存在です。その過去は謎に包まれていますが、銃器の扱いに長け、幾度となく探検隊を窮地から救います。
案内役・スン
元ベトナム難民であり現地案内役のスンは、異国の文化と砂漠の知識を持つ重要なキャラクターです。彼の過去や個性は物語に深みを加えています。

作品のテーマとメッセージ性

冒険小説としての醍醐味

『魔境密命隊』は、単なる冒険小説に留まらず、人間の本質的な欲求――未知への探究心を描いています。秘境〈カーフ〉への旅は、読者に「人類が未知の世界を追い求める理由とは何か?」を問いかける内容になっています。

探検の裏に隠された人間ドラマ

本作は、キャラクター同士の人間関係や葛藤も丁寧に描写されています。特に佐嶋の内面の変化や、探検隊メンバーの間に生まれる信頼と対立が物語に深みを与えています。

山田正紀作品らしさとは?

独特な世界観

山田正紀の作品には、独特の幻想的な世界観と、それを現実味ある描写で成立させる技術が光ります。本作もその例外ではなく、〈カーフ〉という神秘的な秘境の描写は読者を引き込みます。

緻密な科学考証と大胆なフィクション

山田正紀は、科学的な知識を背景にフィクションを組み立てることが得意です。本作では、イラン砂漠や正倉院の文化的な背景が、フィクションの物語に説得力を与えています。

見どころ紹介:ここが面白い!

イラン砂漠の描写
砂漠という過酷な自然環境の中で、探検隊が試練に直面する場面は圧巻です。
「竜の涙」とは?
物語の鍵となるこの謎は、終盤で驚きの形で解明されます。その展開は読者を裏切りません。
スピード感のある展開**
軍の襲撃や自然の猛威など、次々と襲いかかる障害が物語を盛り上げます。

他作品との比較:探検隊シリーズの中での位置づけ

[『崑崙遊撃隊』](/biblio/kunlun)や[『ツングース特命隊』](/biblio/tunguz)と並ぶ秘境探検隊ものですが、『魔境密命隊』は特に心理描写や世界観の構築に力が入っています。ストーリーのスピード感では他作品と比較してやや落ち着いた部分もありますが、テーマ性の深さで際立っています。

読者レビューや評価の傾向

『魔境密命隊』は、多くの読者から高い評価を得ています。一方で、後半の展開にやや冗長さを感じるという意見も。一方で、「竜の涙」や〈カーフ〉の設定については圧倒的に好意的な意見が多く、山田正紀の想像力を絶賛する声が目立ちます。

最後に:『魔境密命隊』を読むべき理由

山田正紀の『魔境密命隊』は、冒険小説ファンにとって必読の一冊です。壮大な冒険、魅力的なキャラクター、そして人間の本質に迫るテーマ。これらが融合した本作は、読者にとって新たな世界を体験させてくれるでしょう。

未読の方は、ぜひ手に取ってみてください。魅力あふれる冒険の旅が、あなたを待っています!

文庫・再刊情報

叢書双葉文庫
出版社双葉社
発行日1987/05/25
装幀 生頼範義、鈴木邦治