
叢書 | TOKUMA NOVELS(女囮捜査官4ー臭姦ー) |
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出版社 | 徳間書店 |
発行日 | 1996/08/31 |
装幀 | 西口司郎、多田和博 |
内容紹介
ユカちゃん人形の狂気と昭和の影
書誌データ
- TOKUMA NOVELS(女囮捜査官4 ―臭姦―)
- 出版社:徳間書店
- 発行日:1996/08/31
- 幻冬舎文庫(サブタイトルを―臭覚―に変更)
- 出版社:幻冬舎
- 発行日:1999/02/25
- 解説:二階堂黎人
- 朝日文庫(タイトルを「おとり捜査官」に変更)
- 出版社:朝日新聞出版
- 発行日:2009/06/30
- 解説:二階堂黎人、新保博久(山田正紀論)
- 徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#5>(タイトル・サブタイトルを「囮捜査官 北見志穂4 -芝公園連続放火-」に変更)
- 出版社:徳間書店
- 発行日:2022/06/15
- 解説:太田愛
こうした形で、同じ内容が各社の文庫や叢書レーベルによって幾度も装いを変えて刊行されてきたのが特徴です。山田正紀のあとがき・解説や、他の評論家による巻末解説などが、版ごとに異なっている点もファンには嬉しいところでしょう。
あらすじ概略
本作の冒頭は 「連続放火事件の捜査中に発見された女性全裸遺体」 という、強烈な場面から始まります。場所は東京都港区の芝公園。深夜に外車を狙った連続放火事件が発生しており、囮捜査官として警視庁の特別被害者部に所属する北見志穂も応援要員として張り込みに駆り出されていました。そこへ突然の停電が起こり、その短い闇の中で大胆な放火の火の手が上がる。慌てた捜査陣が混乱するうちに、なんと公園のベンチに日焼け止めオイル(またはクリーム)を塗られ、ツルツルに脱毛処理された女性の全裸死体が置かれていた――。
さらに、その遺体の近くからは、被害者とまったく同じ姿勢を取らせた ユカちゃん人形 が発見されます。遺体と人形の間にいかなる関連があるのか? まるで見立て殺人じみた状況に捜査陣は混乱に陥ります。
やがて、芝公園では 第二、第三の被害者 が立て続けに発見され、しかもそのたびに何らかの形でユカちゃん人形が添えられていた――。一方で、連続放火事件の犯人は犯人で、停電の混乱やガソリンを運ぶ奇妙なやり方などを駆使し、警察の邀撃作戦をかいくぐって犯行を繰り返します。しかも、どうやら放火事件と見立て殺人事件は、どこかで接点を持っているらしい……。本作の面白さは、この 二つの事件が同時並行で進展していく“モジュラー形式” にあります。
さらに、主人公である北見志穂の相棒役・袴田刑事が単独行動を起こして別の筋から事件の糸口を探っているという点も、読み応えを増す要素です。彼が暴走ともいえる行動で怪しげな集団に斬り込んでいく展開は、 ハードボイルド的なニュアンス を帯びています。その結果、袴田自身の過去(ドラッグ関連で失敗をした過去)が浮かび上がり、彼の人間性やトラウマが初めて読者に提示されることになるのも見どころでしょう。
作品のキモ:見立て殺人と“昭和”という亡霊
本作は、シリーズ前3作と比べても 特に「昭和」へのノスタルジーや風刺 が際立つ作品です。具体的には、大田区にかつて数多く存在した町工場の火災事故や、黄金町での投身自殺事件、海外で古着を買い漁って日本で転売するビジネス、といった 昭和高度経済成長期以降の負の遺産 のような出来事が物語に大きく関与してきます。そして、「ユカちゃん人形」のモデルである実在の着せ替え人形もまた、昭和の夢やファンシーな女の子の憧れを体現したアイコンのひとつ。そこに歪んだ執着を示す犯人の姿を通じて、社会派の視点・時代批評としての深みが加わっているのです。
既に参照した各種ブログレビュー等で、 「昭和が生んだ歪みや弱者の取り残された思いが、凶行の背後に潜む構図を浮かび上がらせる」 と指摘されています。単に異常犯罪の謎解きをするだけでなく、過去の日本社会が抱えた構造的な歪みが殺人者を生み出した要因の一端になっている。このあたりの複雑な事情が、本作のエンディングで明かされる「真犯人の動機=ホワイダニット」の切なさに繋がっています。
“被害者学”と“おとり捜査”の設定
シリーズ全体では、警視庁・科学捜査研究所に新設された「特別被害者部」という舞台装置が物語を牽引してきました。“被害者学”という独特の捜査手法を標榜し、異常犯罪の標的になりやすい(=犯人が理想的な被害者だと感じる)人物像を作り上げ、そこに自ら囮として入り込むのが北見志穂。『囮捜査官 北見志穂』というシリーズ名が示す通り、彼女こそ“生まれながらの被害者”という極端なキャラクターづけが為されており、それがシリーズの原動力になっています。
ただ、本作においては、 志穂がおとり捜査官として積極的に囮を演じる場面は、若干少なめ だと言えるでしょう。もちろん、第二の被害者が水着姿だったという点から、志穂が同じような水着姿をしてプール周辺を探り回る場面など囮めいた作戦も投入されますが、メインストリームは 見立て殺人と放火事件の同時捜査 という構図になっており、前作や前々作よりも“おとり捜査”の割合は低めです。
それでも、作中でユカちゃん人形についての捜査を任されたり、または袴田とは別方向から事件の真相に迫ったりする動きを見ると、 志穂の視点がまさに“被害者目線” であって、被害者学的思考回路が活かされている場面は随所に見られます。結果的に、ユカちゃん人形のルーツにたどり着き、20年前の工場火災の悲劇を明らかにするのも、志穂らしいアプローチの賜物でしょう。
モジュラー形式の妙
本作の特徴である“モジュラー形式”は、 複数の事件が同時並行的に、それぞれ異なるタイミングで捜査線上に浮かんでは交錯する 構造を指します。法月綸太郎が『おとり捜査官1 触覚』の解説(朝日文庫版)で言及しているように、山田正紀は多層的な犯罪を並列して描くことで読者の視線を攪乱し、物語全体に大きなうねりを作る手法を得意としています。
- 連続放火事件:高級外車が放火される事件がメインかと思いきや、その裏には停電を利用したスリリングな手口がある。
- ユカちゃん人形連続殺人(見立て殺人):被害者が人形のイメージと重なるように処置されて発見され、しかも時系列的に放火事件とほぼ同時進行している。
- 袴田刑事によるドラッグ関連の捜査:かつてのトラウマから、どこか強引に突っ走ってしまう。これが意外な形で見立て殺人や放火事件に繋がるヒントを引き当てる。
- 大田区の町工場火災と昭和の遺産:20年前の火災による悲劇と、その生き残りだった少女の存在が、見立て殺人の裏で大きな意味を持つ。
こういった要素が頻繁に“交差”し、読者としては一体どれが主筋なのか、どこで事件が繋がるのかが読みどころとなります。最終的には、これらが 点と点が線を作るように 組み合わさり、解決へ収斂していく。そのプロセスを楽しむミステリ好きには、非常に満足度の高い構成になっています。
トリックと真相:派手さよりもストーリー重視
本作においては、 「停電の6分間の闇」や「日焼け止めクリームを塗った遺体」などの奇抜な着想 が目を引きますが、いわゆる本格ミステリらしいトリックでアッと言わせるタイプではないとも言えます。むしろ、連続殺人における死体の処理や見立ての奇怪さは、「犯人の病的な心理を表現するため」の仕掛けとして機能しており、純粋な論理パズルというよりはサイコスリラー的な雰囲気が前面に出ています。
例えば、第1の被害者については「全身脱毛処理+日焼け止めオイルを塗る」という行為自体が異様です。しかし、それが犯人にとっては“ユカちゃん人形”そっくりに仕立てるための必要行為だった――と判明することで、読者はぞっとするわけです。しかもユカちゃん人形は、経年の差異(初期版か後期版か)や細部の仕様の違いによって「犯人がどこから手に入れたものか」を推理する手がかりになっています。この点は、いかにもミステリ的なディテールの積み重ねといえましょう。
動機(ホワイダニット)の切なさ
最終的には、犯人がなぜユカちゃん人形の見立てに執着したのか、なぜその“昭和の夢”とも呼ぶべきアイコンにすがるような殺人を繰り返したのか――という点が明かされます。その真相の背景には、「放火」「町工場火災」「捨てられた少女」「歪な家族像」といった過去の痛ましい記憶があり、読後には一種の哀惜が残るでしょう。シリーズの他作品以上に、「狂気に陥らざるを得なかった犯人の姿にやるせなさを覚える」という読者が多いのも納得の内容です。
袴田刑事の物語として
シリーズ読者にとって注目すべきは、 本作が袴田刑事の背景や人間性を大きく掘り下げる回 であることです。北見志穂の相棒として常に現場で彼女を守り、時には捜査の先を走るような大胆さを見せる一方で、どこか万年補欠というか“無能刑事”扱いされがちな袴田。しかし今回は、ドラッグ絡みの情報に突き動かされて単独捜査に突入していき、悲惨な暴行を受けてしまうほどに 猪突猛進 します。
なぜ彼がそこまでドラッグ犯罪を憎むのか。なぜ彼の中には、普段と打って変わる狂気じみた行動が宿るのか――。そこにある過去の出来事が、 最終巻『囮捜査官 北見志穂5』(朝日文庫版・幻冬舎文庫版では「女囮捜査官5」「おとり捜査官5」など)の伏線とも言える形で明かされるのです。実際に次巻ではシリーズの最終的な結末が描かれ、袴田の存在がどう物語に絡んでいくかも見逃せません。(※本記事ではネタバレを避けるため詳細には踏み込みません。)
シリーズ内での評価と位置づけ
一部の読者からは、 「おとり捜査官(=北見志穂)の活躍が控えめで、警察小説的なチーム捜査のウェイトが大きい」 としてやや賛否があったようです。しかし、それを補って余りあるほどに、昭和という時代の亡霊が浮き彫りになった社会派的なテーマ性や、放火・見立て殺人・ドラッグ密輸といった多元的な事件を見事に収束させる構成力が評価されています。また、「凄惨でありながら哀切なラストシーン」に強い印象を受けたという読者も少なくありません。
五感副題の「嗅覚」「臭姦」「臭覚」問題
シリーズでは“五感”に合わせたサブタイトルが付けられており、初版(トクマ・ノベルズ版)は『女囮捜査官4 ―臭姦―』、幻冬舎文庫版が『女囮捜査官4 ―臭覚―』、朝日文庫版ではこの副題がなく『おとり捜査官4』となり、徳間文庫版(2021年からの新装版)では「囮捜査官 北見志穂4 -芝公園連続放火-」と変更されています。 これには、やはり文字面の刺激の強さなど出版上の事情があったと推測されます。いずれにしても、本作で扱われている感覚が “嗅覚” というのは、作品内容を考えると確かに微妙な印象があるかもしれません。むしろ火や煙の匂いという側面よりも、昭和という時代の“におい”がテーマなのかもしれない、と受け取る読者もいるでしょう。
登場人物の動きと事件の結末(詳細分析)
それでは、ここから具体的に作品の筋立てをもう少し掘り下げてみます。なお、ネタバレ要素を含みますのでご注意を。
- 芝公園周辺で発生する高級外車放火事件
- 犯行日時:月曜日か火曜日の深夜近くが多い。
- 犯行手口:ガソリンを缶(4リットル缶など)に入れて運び、公園周辺で車に放火する。
- 警察の対応:私服捜査官をアベックや酔っ払いに偽装して張り込み、邀撃捜査を行う。
- 北見志穂・袴田刑事コンビも動員される。
- 停電の6分間に発見された女性全裸遺体
- 深夜の停電が発生し、あたりが真っ暗になった間に火の手が上がる。
- 再点灯後、公園のベンチで全裸女性死体が見つかる。
- 彼女の身体には脱毛処理と日焼け止めクリームが施され、ユカちゃん人形と同じポーズにされていた。
- 後に被害者は国際線のCA(客室乗務員)と判明。胃の内容物から機内食を食べていたことが推測される。
- 第二の犠牲者:真っ赤なビキニ姿の女性
- 芝公園の水遊び場にて発見される。
- ムダ毛処理・日焼け止め塗布など、遺体を人形風に仕立てる特徴は同様。
- 傍らには同じ水着を着せたユカちゃん人形が置かれていた。
- 被害者は熱射病(重度の熱中症)にもかかっていた痕跡があり、外国人売春の可能性などが示唆される。
- 第三の犠牲者:キャデラックのボンネット上で発見
- テニスウェア姿にされており、やはりユカちゃん人形(オープンカーの玩具に乗せたもの)が近くに置かれていた。
- 現場にはガソリンが撒かれかかっており、放火犯との接点を感じさせる。
- 袴田刑事の単独捜査と重傷
- 監視カメラ映像やドラッグの裏ルートを独断で調べ、何者かに襲われる。
- その入院先で、過去にドラッグ関連で苦い経験があることや、警視庁内部・検察との確執めいたものが語られる。
- 物語後半で、袴田の行動が別筋の事件(マリファナ密輸など)を解明する鍵になる。
- 町工場放火の因縁
- 20年前に大田区の町工場が放火され、経営者夫妻が死亡、娘だけが生き残る。
- 放火犯とされた青年(従業員)は不倫関係にあった経営者の妻と揉めたとも言われ、のちに横浜・黄金町で投身自殺をしたという。
- ユカちゃん人形をその町工場で下請け生産していた時期があり、人形のロットや型番により、生産時期を特定可能。
- 事件の集束と意外な真犯人像
- 放火犯は逮捕されるが、見立て殺人の方は別の人物。
- しかも、その人物が事故死(または別の事件)で亡くなり、真相は闇に――かと思いきや、最後の局面でさらにどんでん返し。
- 真犯人がこだわった“昭和”と“ユカちゃん人形”の象徴性、それを取り戻すことが動機だった悲痛な経緯が語られる。
こうして並べてみると、重層的に発生する事件の絡み合いが際立つのが分かるでしょう。読んでいる最中は、「あれ、この人物はどこでつながっていたんだっけ?」と一瞬戸惑うこともあるかもしれませんが、最終的には筋が通っていきます。モジュラー形式が好きな読者にとってはたまらない構成ですし、最後に解かれる謎が「なぜユカちゃん人形なのか?」という ホワイダニットに収斂する点も秀逸です。
社会派的テーマ:昭和の遺産と“歪み”の告発
多くの読者コメントやレビュー(たとえばBookmeterなど)で言及されるのが、 「本作は猟奇犯罪に見えて、その実、社会派の色彩が強い」という指摘です。町工場が火災で焼け落ちるまでの悲劇や、黄金町の怪しい闇、未回収の伏線として何度も登場する停電問題、海外からの密輸ビジネスなど、昭和から平成にかけて日本社会が抱えていた多層的な闇が、物語を構成するピースとして扱われています。
特に印象的なのは、「ユカちゃん人形」が象徴する “昭和の夢”。機能的で豊かな家庭、まるで人形遊びの理想的なパパとママ、そして可愛らしい娘……といったイメージは、経済成長期の日本人が思い描いた幸福の象徴だったかもしれません。しかし、そんな理想像の裏では長時間労働による過労死や、女性へのケア労働の押し付け、町工場の劣悪環境、男女差別、資本の偏在など多くの矛盾が生じていました。本作の犯人は、そうした歪んだ現実の中で苦しみ、取り残され、最終的に狂気へ至ってしまった存在なのです。
山田正紀は、このような “昭和”への批評性 を時にストレートに、時に隠喩的に描くのが巧みな作家でもあります。結果、本作は連続殺人のミステリというよりは、昭和という時代全体を背景にした大きな物語として読むことができるわけです。
評論家や作家からの評価
幻冬舎文庫版や朝日文庫版には、有名な新本格系の作家や評論家(法月綸太郎、新保博久など)が解説を寄せており、「五感をモチーフにした異常犯罪とスピーディな警察捜査が見事に合わさった快作」「モジュラー形式の多面展開は山田正紀ならではの冴え」など絶賛の言葉が並んでいます。さらに、「社会的なテーマがシリーズ中でも際立っているのが第4作である」という意見も見受けられます。
読後の余韻
本作のラストで提示される真相は、 真犯人がどうやって殺人を成し遂げたか(ハウダニット)よりも、なぜそんな犯行に至ったか(ホワイダニット)の部分に焦点が当たります。そこには人形という空虚な“器”を愛でる狂気があり、同時に「もしあのとき昭和のあの火災が起きなければ……」という悲しい if が感じられるのです。
読者によっては「犯人があまりにも救われない」と感じるかもしれません。一方で、それが 昭和に育まれた哀しい歪みの帰結 であることを、本作は静かに描いているのではないでしょうか。明確な正義もなければ救済もない。ただ、女囮捜査官・北見志穂が事件を解体していく過程で、もう一度“被害者”としての視線がスポットを当てられ、そっと記憶に刻まれていく――。そうした余韻が残る読後感と言えます。
シリーズを読む順番と今後への期待
『囮捜査官 北見志穂4』は一応、単独でも読める形にはなっていますが、やはり 第1~3作との連続性、特に志穂の成長や袴田刑事との関係変化などを踏まえると、順番通りに読むことが推奨されます。第5作はシリーズ最終巻であり、衝撃的な結末が用意されているため、ぜひ通して堪能してほしいところです。
なお、最新の徳間文庫版では、山田正紀自身のコメントとして「既刊の5をシリーズから外し、代わりにシーズン2ともいうべき新作を書く予定」という言及があります。従来の全五巻体制とはまた違う動きがある模様。いずれにしても、 「囮捜査官 北見志穂」シリーズがリブートされ、新作が登場する可能性も示唆されています。ファンにとっては見逃せませんね。
関連書籍・参考URLまとめ
本稿で参照した情報、あるいはさらに詳しい解説を読みたい方への参考URLを以下に示します。
なお、各引用元については本記事に盛り込んだ範囲での確認に留まるため、詳細を知りたい場合は実際にリンク先を訪れる、または該当出版社・文庫の奥付や解説を直接参照することをおすすめします。
まとめ:多面的に楽しめる警察サイコスリラー
以上、『囮捜査官 北見志穂4』をざっと解説してきました。結論をいえば、この作品は
- 猟奇的見立て殺人×連続放火×ドラッグ密輸という複雑事件の多層性
- 昭和から平成への移り変わりを象徴するユカちゃん人形というモチーフ
- 袴田刑事の単独捜査と過去の掘り下げが加わって生まれる社会派的視点
- そして、真相判明後に残る“哀しみ”や“やるせなさ”
という要素が渾然一体となった、シリーズ中でも異色かつ読み応えのある一冊と言えるでしょう。捜査のスピード感やサスペンスフルな描写はもちろん、犯人の内面に潜む闇や、昭和という時代が人々の人生に落とした影を描き出す筆致こそが、山田正紀ならではの魅力を最大限に発揮しています。
もしまだ手に取っていない方は、ぜひ本書を読んでみてください。単体でも楽しめますが、1~3作を押さえてから読むと、「今回はちょっと今までと違うテイストだな」という変化も感じられるはず。そして、その先に控える第5作の壮絶な結末に向けて、シリーズ全体を追いかける醍醐味を味わってほしいと思います。
なお、本記事に含まれる要約部分は、すべて当該作品・各種文庫版における物語内容の紹介であり、直接の大規模転載は行っていません。また、引用文例については、適宜要約や抜粋の形で記載しています。
文庫・再刊情報

叢書 | 幻冬舎文庫(サブタイトルを-臭覚 -に変更) |
---|---|
出版社 | 幻冬舎 |
発行日 | 1999/02/25 |
装幀 | 辰巳四郎 |

叢書 | 朝日文庫(タイトルを「おとり捜査官」に変更) |
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出版社 | 朝日新聞出版 |
発行日 | 2009/06/30 |
装幀 | 多田和博、getty images |

叢書 | 徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#5>(タイトル・サブタイトルを「囮捜査官 北見志穂4-芝公園連続放火-」に変更) |
---|---|
出版社 | 徳間書店 |
発行日 | 2022/06/15 |
装幀 | KENTOO、円と球 |