
叢書 | TOKUMA NOVELS(女囮捜査官3ー聴姦ー) |
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出版社 | 徳間書店 |
発行日 | 1996/06/30 |
装幀 | 西口司郎、多田和博 |
内容紹介
誘拐ミステリとサイコサスペンスの極致
はじめに
山田正紀の「囮捜査官 北見志穂」シリーズは、警視庁科学捜査研究所に設立された「特別被害者部」を舞台とする全五巻(※初期刊行当時の構成)から成り立っています。従来の警察小説とは一味異なるトリッキーな着想や、サイコスリラーを思わせる心理描写を前面に出した独特の“超絶ミステリー”であり、各巻に「五感」をもとにしたサブタイトルが付されていたことがシリーズの大きな特徴でした。
シリーズ第三弾にあたる本作は、初刊行時に「女囮捜査官3―聴姦―」(TOKUMA NOVELS / 1996年)というタイトルで世に出ました。その後、幻冬舎文庫版では「聴覚」、朝日文庫版では「おとり捜査官」のタイトルを採用し、さらに2022年には徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#4>として「囮捜査官 北見志穂3 -荒川嬰児誘拐-」に改題。こうして長年にわたって読み継がれ、版元を変えては読者を魅了し続ける人気作となっています。
本記事では、シリーズの流れや作品の本質に深く踏み込みながら、「囮捜査官 北見志穂3」がもつ魅力を多角的に論じていきます。
なお、本記事の内容は、作品及び既刊の解説やインタビューなどを総合し構成しています。引用した参考文献については、記事後半や脚注の形でURLとともに提示します。公表されている情報をもとに執筆し、誤解や推測が生じないよう十分に留意いたしました。
基本データ(各版の概要)
本作は、書名やサブタイトルが異なる形で複数出版されています。以下に、各版の基本情報を整理します。
- 初出(トクマ・ノベルズ):
- タイトル:『女囮捜査官3ー聴姦ー』
- 出版社:徳間書店
- 発行日:1996/06/30
- 幻冬舎文庫版:
- タイトル:『女囮捜査官3 - 聴覚 -』
- 出版社:幻冬舎
- 発行日:1998/10/25
- 解説:恩田陸
- 朝日文庫版:
- タイトル:『おとり捜査官3』
- 出版社:朝日新聞出版
- 発行日:2009/05/30
- 解説:恩田陸、新保博久(山田正紀論)
- 徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#4>:
- タイトル:『囮捜査官 北見志穂2 荒川嬰児誘拐』
- 出版社:徳間書店
- 発行日:2022/02/15
- 解説:斜線堂有紀
作品概要とあらすじ
シリーズの位置づけ
「囮捜査官 北見志穂」シリーズは、凶悪犯罪の被害者像をプロファイリングする“被害者学”の発想や、捜査のために“理想的な被害者”をあえて作り出す“おとり捜査”を組み合わせた独創的なミステリーです。主人公は、その“理想的な被害者”像を体現してしまった女性捜査官・北見志穂。組織内では常に“異端”視されながらも、驚くべき執念と繊細な感受性を武器に、通常の捜査方法では太刀打ちできない難事件に挑む姿が描かれます。
第一弾では「山手線連続通り魔」、第二弾では「首都高バラバラ殺人事件」など、どちらもリアルに都市型犯罪の様相を取り込み、かつ山田正紀らしいアイデアが散りばめられた問題作でした。本作はそこからさらに一歩踏み込み、誘拐事件という犯罪の根源的恐怖を扱いながら、主人公自身が抱える心の闇を正面から描いています。
あらすじ(大まかな流れ)
本作では、前作で北見志穂が凶悪犯を射殺したという衝撃的な行為がきっかけとなり、彼女が深い精神的ストレスを負ってしまいます。軽度の神経症と診断された志穂はカウンセリングを受けながら捜査現場への復帰を目指すのですが、なんとそこに新生児誘拐事件が発生します。しかも犯人は身代金の運搬役として北見志穂本人を名指しで指名してきたのです。
誘拐犯は一切正体を見せず、赤ん坊を取り戻すために警察が裏をかこうとすると巧みな方法で出し抜いていきます。さらには志穂自身も“自分が誘拐犯なのではないか”と思わざるを得ないほど、何かしらの暗示に追い詰められていく。この状態は多重人格を疑われるほどに深刻で、周囲の捜査官たちも志穂の精神的な不安定さを見て、彼女に対し疑いを抱き始めます。
事件は次第に、赤ん坊の誘拐というシンプルな犯罪の形を超えて、“存在しないはずの双子の妹” とどう関わってくるのか。そのうえ、シリーズを通してほのめかされてきた「被害者学」「おとり捜査官」の設定が、この第三弾でどのように発展するのかも非常に大きな見どころ。物語終盤では山田正紀らしいド派手な真相開示が展開され、読み手を圧倒的なクライマックスへと導いていきます。
物語の構造:誘拐ミステリ+サイコサスペンス
本作は大きく「誘拐事件をめぐる警察の攻防」と「北見志穂の過去や内面にフォーカスしたパート」という2つの軸から構成されます。この手法は、いわゆる「カットバック形式」とも呼ばれるもので、現在進行形の時間軸(誘拐事件の緊迫感あふれる展開)と、そこに至る経緯や志穂の精神的変遷が交互に挿入されることで、一種の幻想的で不安定な雰囲気が醸成されています。
誘拐事件パート
- 生後2週間の赤ん坊が誘拐される。
- 犯人が身代金として1億円を要求し、運搬役に“なぜか”北見志穂を指定。
- 警視庁捜査一課が主導して捜査を進めるが、犯人の狡知なやり口に常に翻弄される。
- 志穂も捜査に加わるが、周りから「彼女が関与しているのではないか」という視線を向けられてしまう。
本作の中心は、緻密に設計された誘拐事件です。犯人は赤ん坊を標的に選び、逆探知を回避する連絡手段や、荒川を舞台にした身代金受け渡しのトリックを駆使して捜査陣を翻弄します。特に注目すべきは、世界最小の密室と称される誘拐現場の設定です。このアイデアは、山田正紀の得意とする物理的・論理的なトリックを存分に発揮したもので、読者に強い印象を残します。
例えば、犯人が指定する荒川のクルーズ船「クィーンメリッサ号」での身代金受け渡しシーンは、時間と空間を限定した緊張感溢れる舞台設定が秀逸です。志穂が船上で犯人の指示に振り回される様子は、まるでチェスの対局のように戦略的で、サスペンス映画のような臨場感があります。読者からは「誘拐パートのスピーディーな展開が息つく暇もない」と評されるほど、そのスリリングさが際立っています。
さらに、誘拐事件の動機や背景には社会的な問題が織り込まれています。具体的には、「胎児の名簿」売買という個人情報ビジネスが絡み、政治家への賄賂疑惑が浮上する展開です。この点は、1990年代の日本における個人情報保護法制化の動き(2003年の個人情報保護法成立以前)を背景にしたリアルな設定と言えるでしょう。
サイコサスペンス(多重人格の疑い)
一方で、シリーズの主人公である北見志穂自身が「犯人は私の双子の妹かもしれない」と思い始める展開が、本作をきわめて特異なものにしています。志穂は前作で犯人を射殺したトラウマから来る精神的な不安定さが深刻化し、カウンセリングの過程で「自分の中に別の人格がいるのでは」という妄念に捉われる。その別人格が「双子の妹」として具現化し、作中でも意味深なイメージとして描写されていきます。
- 「本当にそんな妹が存在しているのか、それともすべて自分の妄想なのか」
- 「誘拐犯が妹なら、自分も共犯なのではないか」
このような懐疑が生々しく描かれ、読者にも“信頼できない主人公”という印象を与えます。その結果、「誘拐犯は本当に外部にいるのか? それとも全部、志穂の妄想が生んだ幻影なのか?」という二重三重の仕掛けが作り上げられ、ひとつの誘拐サスペンスとしては異例の不穏さを帯びているのです。
主な登場人物とその相関
北見 志穂(きたみ しほ)
- 本シリーズの主人公である“おとり捜査官”。
- 犯人を射殺したことが原因で、現在は軽度の神経症と診断されている。
- 周囲からの偏見と向き合いつつ、誘拐事件の捜査に挑む。
- “存在しない双子の妹”を感じるようになり、自身でも自分を疑い始めるという極限状況に。
遠藤 慎一郎(えんどう しんいちろう)
- 警視庁科学捜査研究所の「特別被害者部」を設立した人物。犯罪心理学の権威。
- 志穂の上司的存在だが、本作では海外出張中などで“直接のサポート”が十分に及ばない設定。
- 本シリーズ全体では志穂を陰で支える重要なキーパーソン。
袴田 刑事(はかまだ けいじ)
- 志穂の“護衛役”ともいえるベテラン刑事。
- 時には志穂をいさめ、時には協力し合って事件に当たる“相棒”のような存在だが、上層部の圧力などもありジレンマを抱えがち。
- 本作では、志穂の精神状態を気遣いながらも捜査現場で翻弄される。
井原 警部補(いはら けいぶほ)
- 捜査一課の刑事。赤ん坊誘拐事件の一端を指揮する立場で登場。
- 犯人に翻弄されるうち、次第に志穂にも疑いを向けていく。
- 志穂との対立や衝突が物語をさらに複雑にしている。
カウンセラーの宮澤佐和子(みやざわ さわこ)
- 徳永教授(精神医学の権威)の愛弟子。志穂のカウンセリングを担当する女性。
- 志穂が抱える精神的ストレスの克服を助けようとするが、その過程で不可解な要素が次々に浮かび上がる。
その他にも、東京地検特捜部や大物政治家の名前がチラつき、単なる一事件の枠を超えた陰謀めいた動きが見え隠れする点が本作の魅力です。また、捜査を妨害するかのような電話や、事件の裏に潜むビジネススキャンダルなど、複数の要素が同時進行で絡まりあうため、読者は常に「先を読みたい」「真相を知りたい」という気持ちに駆られてしまうでしょう。
作品の注目ポイント
「五感」をめぐる仕掛け
シリーズ各巻は五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)をモチーフとした異常犯罪の演出がなされています。第三弾にあたる本作は、初刊時のサブタイトルが「聴姦」、後に「聴覚」と改められています。
- 誘拐犯からの電話(音声)による指令
- 「双子の妹」の“幻聴”とも思える謎の声
- 音を遮断しようとする不審な行動
こうした耳や声にまつわる要素が、物語全体を覆う緊張感を生んでいるのです。もっとも、山田正紀自身が各巻で「五感」の設定を100%徹底的に使っているかというと、そこは読者の意見が割れるところであり、“モチーフとしてうまく生かしている箇所と、あまり意識されないまま流れていく箇所”が混在する印象です。しかしながら、追い詰められた志穂が耳を塞ぎたくなるような恐怖や、自分の耳が作り出す“不穏な声”にかき乱される場面は、シリーズならではのサイコサスペンスとしての味わいをより強くしています。
信頼できない主人公
一般の推理小説では、主人公の視点から事件を見つめることで読者が真相に近づいていくのが定石です。しかし、本作の志穂は 「自分が加害者なのでは?」 とさえ思い込むほど精神的に不安定。自分の過去を正しく認識できているのかも疑わしい状態です。そのため、志穂の視点をそのまま鵜呑みにすることができず、読者は彼女の一挙手一投足に戸惑わざるを得ません。
この“語り手不信”の演出がサスペンスを大きく盛り上げているのは言うまでもありません。さらに、志穂の一連の精神的危機が“おとり捜査官”という特殊設定とも深く結びつきます。被害者の立場を演じ続けることで犯罪者を誘い出すというのは、そもそも大きな負荷のかかる行為ですが、シリーズ第三弾では“自分自身が本当に被害者なのか、それとも…”という疑念が加速度的に膨らんでいくわけです。
山田正紀らしいアイデアの詰め込み
誘拐事件の計画そのものが非常にトリッキー。身代金の受け渡し方法や通話手段、荒川を下るクルーズ船「クィーンメリッサ号」の活用など、「なるほど、そんな手があるのか」 と唸らされる仕掛けが次々に出てきます。山田正紀はデビュー当時からSFやアヴァンギャルドな作風を得意とし、奇想天外なアイデアを物語に組み込む巧みさで知られてきました。その作家性が、警察小説+誘拐ミステリの舞台に適度な“超現実感”を与えているのです。
ただし、犯人があまりに周到で、その計画が“うまく行きすぎる”ようにも見える、という批評はしばしば見受けられます。現実の捜査ならば破綻しそうに思える部分も、小説だからこそ存分に楽しめるフィクションとしての魅力があるといえるでしょう。
シリーズにおける物語的意義
志穂自身の物語が前面に
前作「囮捜査官2 首都高バラバラ死体」からの流れを受けて、「北見志穂自身の事件」 という要素がより強く打ち出されています。すなわち、誘拐事件はもはや“警察vs.犯人”の構図だけでなく、“志穂vs.志穂の内面”というサイコサスペンスとしての二重構造が全面化。このシリーズには毎回犯人がいて被害者がいて…という警察小説の定番的な要素がある一方、志穂個人が“生まれながらの被害者” という特殊設定を背負っている点が並走するのです。
今作の鍵となる多重人格疑惑は、志穂が自分自身を疑うだけでなく、“周囲からの視線や抑圧”をもリアルに体感させます。この状況はシリーズとしての通奏低音である「被害者学」のテーマ──“被害者になるとはどういうことか”──を強烈に体現していると言えるでしょう。
シリーズ全体への伏線
本作は第三弾ですが、最終巻に用意される衝撃的な結末への伏線も多々含んでいます。山田正紀はこのシリーズにおいて、最後に“とんでもない真相”を提示すると宣言しており(※実際にそのように語ったインタビューや巻末エッセイの言及がある)、本作でもその下準備といえる要素が散りばめられています。
読後の感想としては「このまま四作目、五作目へ行ったらいったいどうなってしまうのか?」と期待と不安が入り交じる内容になっています。特に志穂の“妹”絡みの描写や、捜査を阻害する政治的圧力の存在などは、シリーズ終盤でより大きな形をもって回収されることが示唆されていると言えるでしょう。
評価と読後感
読者や評論家の反応
刊行当時、翻訳サイコスリラーがブームで、多重人格や児童誘拐などの題材が日本でも注目を集め始めていました。本作はそれら海外作品のエッセンスを日本の社会背景に落とし込んだという印象もあり、「意欲的な警察+サイコスリラーだ」 と評価されました。一方で、誘拐事件に絡むトリックの多さや、政治的思惑などが詰め込まれすぎて「やや強引だ」という声も。
ただ、その“強引さ”を含めてパワフルな娯楽ミステリーとしての評価が高いのも事実です。とりわけ終盤の一気呵成な伏線回収と犯人像の異様さは多くの読者が「圧倒された」と語っています。
強い幻想性と幻惑的な結末
終盤に志穂の“妹”の謎や、犯人が抱いていた底知れない動機が明らかになるくだりは、一種の幻想小説やホラーにも近い雰囲気を帯びています。読者は現実と妄想の境界が曖昧になるような体験をし、ラストシーンに至って 「これはいったい何だったのか……」 という深い余韻を感じるのです。
ありきたりな“ヒーローが事件をスパッと解決する”警察小説ではなく、主人公自身がひどく傷つき、なおかつ事件の真相がどこか後味の悪さを残す。そこに山田正紀らしい“超絶ミステリー”のエッセンスがあります。
総合考察
ここまで見てきたように、「囮捜査官 北見志穂3」はシリーズ内でも特に主人公の内面に切り込んだ意欲作といえるでしょう。赤ん坊誘拐という現実的に重いテーマを扱いつつ、半ば幻想的ともいえる“妹”の存在や多重人格の暗示が大きく絡み合い、読む者を不安定な心理空間へ誘います。
- 誘拐犯罪ミステリとしての駆け引き:身代金の受け渡し方法や捜査妨害テクニックなどが非常に巧妙。
- サイコスリラーとしての孤独感:志穂の精神世界を追体験するような構成で、読者も恐怖と混乱を味わう。
- シリーズ continuity:前作の事件で犯人を射殺した事実が志穂を苦しめ、さらに次作への伏線もふんだんに散りばめられている。
結末は強烈で、「結局、犯人はなぜああした行動をとったのか」「志穂自身の内面はどう決着をみたのか」など、一読で完全に把握するのはなかなか難しく、再読を誘う仕掛けが多分に含まれている点も魅力です。
本作が提示する主題とメッセージ
「被害者学」というユニークな発想がシリーズ全体を貫くテーマであり、本作ではそれが志穂の内面的問題と化学反応を起こしています。つまり、“おとり捜査官”が自分自身の人格や存在理由を疑わざるを得なくなったとき、人はどこまで精神を病んでしまうのか? 警察組織や周囲の人間はどう受け止めるのか?
さらに、誘拐事件の背景にある政治的スキャンダルや「名簿業界」との癒着など、当時の社会問題(個人情報の売買を巡る規制の甘さなど)も散りばめられ、単に“恐怖をあおるだけ”の娯楽小説にとどまらない重層的な読み応えを備えています。
ここが好き! おすすめポイント
本記事の筆者個人が感じる、本作の“ここが好き”ポイントをまとめます。
- スピード感のある誘拐ミステリ
犯人との駆け引きが緊張感たっぷりで、ページをめくる手が止まらなくなる。 - 志穂の深い苦悩と人間ドラマ
正義の捜査官でありながら、射殺した罪悪感に苛まれ多重人格の疑いまでかけられる。そこに人間の弱さや繊細さが描かれ、読み手も揺さぶられる。 - 山田正紀らしい奇抜なアイデア
マニアックなトリックがそこかしこに散りばめられ、常識的な視点では想像できない方法で捜査が攪乱される。フィクションの醍醐味を存分に味わえる。 - 最終章の圧倒的カタルシス
犯人の論理と動機、そして“妹”の謎が一挙に明かされるラストは、たとえ強引であっても「すごい!」と圧倒されるパワーがある。 - シリーズを通しての重要なターニングポイント
志穂がさらに追い詰められたことで、以後の展開がどうなっていくのか非常に気になる。シリーズを完走したとき、本作での出来事がいかに大きな意味を持つか再認識できる。
読後の注意点と補足
- 本作は誘拐というデリケートな犯罪が扱われるため、苦しい気持ちになる場面もあります。
- 一部に性的ニュアンスのシーンや、カウンセリング描写で精神面の揺らぎがリアルに表現されることから、グロテスクさや過度な暴力描写が苦手な方は注意が必要かもしれません。
- シリーズの2作目を未読でも楽しめますが、やはり前作の事件を踏まえた方が格段に理解しやすくなります。時間があれば順番に読むのがおすすめです。
シリーズ全体に関する展望
「囮捜査官 北見志穂」シリーズは最終的に五作刊行され、その後は山田正紀が“新作を交えたシーズン2”ともいうべき構想も明かしています。現行では、徳間文庫版で改訂・再編集された形で刊行中。新たに読む方も、以前の版で読んだ方も、ぜひ本作を再読する価値があるでしょう。
まとめ
山田正紀の「囮捜査官 北見志穂3」は、単に誘拐ミステリーの枠をはみ出し、サイコサスペンスとしても非常に強いインパクトを残す作品です。世界最小の密室とも言える赤ん坊の誘拐、被害者学とおとり捜査が交錯する独自設定、そして“もうひとりの自分”という妄念に苛まれる主人公。全編に漂う狂気と陰謀のなかで、事件の意外な真相へ辿り着く道筋には意表を突かれることでしょう。
シリーズ第三弾として、物語としての転換点にあたる重要エピソードがぎっしり詰まっているため、一度読んだだけでは収まりきらない読後感があります。“読めば読むほど味わいが深くなる”──まさに山田正紀の魅力が凝縮された一冊です。
もし本作を未読の方は、ぜひ第一弾、第二弾の流れから入り、第三弾である本作の衝撃を体験してみてください。既読の方でも、再読のたびに新しい発見があるはず。誘拐事件の真相や志穂の内面世界を掘り下げることで、あなた自身の感覚もまた、研ぎ澄まされるかもしれません。
参照サイト:
文庫・再刊情報

叢書 | 幻冬舎文庫(サブタイトルを-聴覚 -に変更) |
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出版社 | 幻冬舎 |
発行日 | 1998/10/25 |
装幀 | 辰巳四郎 |

叢書 | 朝日文庫(タイトルを「おとり捜査官」に変更) |
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出版社 | 朝日新聞出版 |
発行日 | 2009/05/30 |
装幀 | 多田和博、getty images |

叢書 | 徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#4>(タイトル・サブタイトルを「囮捜査官 北見志穂3-荒川嬰児誘拐-」に変更) |
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出版社 | 徳間書店 |
発行日 | 2022/02/15 |
装幀 | KENTOO、円と球 |