闇の太守 II -御贄衆の卷-

叢書KODANSHA NOVELS
出版社講談社
発行日1984/05/01
装幀市川英夫、天野喜孝

内容紹介

はじめに

本作「闇の太守 II」は、山田正紀による戦国ファンタジー小説シリーズの第二巻にあたります。前作が連作短編だったのに対し、本作からは3部作の長編として展開されています。

作品の舞台設定

物語の舞台は戦国時代の越前一乗谷。朝倉家を中心に、以下のような複雑な状況が描かれています:

  1. 内部情勢
    • 次期将軍・足利義秋を客人として迎えている朝倉家
    • 表面上は平穏を装いながらも、内部に潜む緊張関係
    • 朝倉義景の子である疾風(はやて)をめぐる複雑な立場
  2. 外部情勢
    • 加賀一向一揆の脅威
    • 上杉家という最強軍団の存在
    • 美濃を制圧した織田信長の台頭

主要な登場人物と役割

疾風(はやて)

本作の主人公。朝倉義景の子供であり、「男子でも女児でもない」という特殊な育てられ方をされている。その運命は朝倉家のみならず、物語全体に大きな影響を及ぼします。

明智光秀

織田信長の部下として有名な明智光秀が、本作では重要な役割を果たします。彼を裏から操る「是界」との関係性が物語の鍵を握っています。

是界

謎に包まれた人物で、明智光秀を操る黒幕的存在。彼の言葉や行動は物語全体を混沌へと導いていきます。

足利義秋

次期将軍として期待される人物。一乗谷に客人として迎えられるも、実際には波乱をもたらす火種とも言えます。

贄塔九郎(にえとう くろう)と御贄衆(おにえしゅう)

贄塔九郎と彼が率いる御贄衆は、物語を一層ダークで不穏な雰囲気に染め上げる存在です。単なる戦国時代の登場人物ではなく、もっと深い象徴性やストーリーの要点を担っています。

物語の構造と特徴

本作は以下のような特徴を持つ重層的な物語構造となっています:

  1. 政治的側面
    • 戦国大名としての朝倉家の立場
    • 次期将軍を巡る権力闘争
    • 各勢力のバランス
  2. 超自然的側面
    • 是界の存在
    • 呪いと予言
    • 陰陽道的要素
  3. 人間ドラマ
    • 疾風のアイデンティティ
    • 家臣たちの忠誠と野望
    • 人間関係の機微

贄塔九郎とは?

1. キャラクターの背景

贄塔九郎(にえとう くろう)は、「御贄衆」という謎めいた集団のリーダーとして登場します。彼の存在は物語全体の中盤から後半にかけて徐々に明らかになり、他の登場人物や朝倉家に影響を与えていきます。贄塔九郎の名が示す「贄(にえ)」という言葉には、「生贄」や「犠牲」といった意味が込められており、このキャラクターの本質や役割が暗示されています。

2. 存在感と影響力

贄塔九郎は、朝倉家の政治や戦いの背後で暗躍する存在です。彼の姿は不気味であり、どこか超常的な雰囲気を漂わせています。その行動は、歴史的現実に基づいている部分もありつつ、完全なフィクションとしての不気味さを感じさせます。特に、疾風(はやて)や明智光秀とどのように絡むのかは、読者にとって大きな関心事となります。

御贄衆とは?

1. 集団の性質

御贄衆(おにえしゅう)は、贄塔九郎に従う者たちであり、ある種の「儀式的」または「カルト的」な要素を帯びています。彼らは単なる武士や忍者ではなく、どこか宗教的な目的や秘密を背負っているように描かれています。御贄衆のメンバーはそれぞれ異なる技能や能力を持ち、物語の中で敵対者に対して恐るべき力を発揮します。

2. 役割と存在意義

御贄衆は、朝倉家や一乗谷の運命に深く関わる存在として描かれています。特に、彼らの目的が単なる戦いの勝敗ではなく、もっと大きな何か――「呪い」や「因縁」に関わっていることが徐々に明らかになります。この集団は、作品全体に漂うダークファンタジー的な雰囲気を強調しています。

贄塔九郎と御贄衆の象徴性

贄塔九郎と御贄衆は、物語の中で「犠牲」と「呪い」の象徴的な存在といえます。戦国時代という時代背景では、多くの人々が権力争いや宗教的な目的のために命を落としていきますが、彼らの存在はまさにその「犠牲」の側面を具現化しています。また、作中では「是界」という謎の存在が登場しますが、贄塔九郎と御贄衆が是界とどのように関係しているのかも注目すべきポイントです。

さらに、贄塔九郎が物語終盤で疾風や朝倉家とどのように対峙するのか、彼の運命が何を象徴しているのかは、読者にとって非常に大きな見どころとなります。

贄塔九郎と疾風の関係性

疾風(はやて)は、本作の主人公でありながら「男子でも女児でもない」という特異な存在として描かれています。一方、贄塔九郎は「生贄」を象徴する存在です。疾風と贄塔九郎が交わる場面は、物語において重要な転機をもたらします。彼らの出会いが朝倉家の運命をどう変えるのか、そして疾風自身の選択にどのような影響を与えるのかは、物語のクライマックスに向けての大きな注目ポイントです。

戦国時代の「闇」を担う存在

山田正紀は『闇の太守 II』を通じて、戦国時代の光と闇を繊細に描き分けています。贄塔九郎と御贄衆は、この「闇」を具体的に体現するキャラクターといえます。彼らの存在は、単なる歴史的フィクションに留まらず、時代そのものが持つ暗黒面――例えば、人間の欲望や犠牲、そして呪われた運命など――を反映しています。

まとめ:贄塔九郎と御贄衆の役割

『闇の太守 II』における贄塔九郎と御贄衆の存在は、物語全体に影を落とす非常に重要な要素です。彼らは単なる脇役ではなく、物語の主題である「運命」「呪い」「犠牲」を体現する存在として登場します。彼らの行動や目的、そして疾風や朝倉家との関係性は、読者に多くの謎と驚きを提供するでしょう。

歴史好きの方だけでなく、ミステリーやダークファンタジーが好きな読者にもぜひおすすめしたい作品です。この魅力的なキャラクターたちが織りなす物語を、ぜひ手に取って楽しんでみてください!

文庫・再刊情報

叢書講談社文庫
出版社講談社
発行日1987/08/15
装幀 天野喜孝、熊谷博人