内容紹介
本作の物語は、新宿駅西口地下通路で発見された女性の切断死体から始まる。匿名の電話による第二の殺人予告を受け、北見志穂を含む捜査陣が張り込むが、目の前で同僚が殺され、容疑者と思しき女性も密室状況のバス内で死体となって発見される。ここから連続殺人事件が加速し、想像を超える展開へと突き進む。本格ミステリの枠組みを超え、謀略小説的なスケールへと拡張する本作は、シリーズの掉尾を飾るにふさわしい衝撃的な結末で読者を圧倒する。
本作の物語は、新宿駅西口地下通路で発見された女性の切断死体から始まる。匿名の電話による第二の殺人予告を受け、北見志穂を含む捜査陣が張り込むが、目の前で同僚が殺され、容疑者と思しき女性も密室状況のバス内で死体となって発見される。ここから連続殺人事件が加速し、想像を超える展開へと突き進む。本格ミステリの枠組みを超え、謀略小説的なスケールへと拡張する本作は、シリーズの掉尾を飾るにふさわしい衝撃的な結末で読者を圧倒する。
山田正紀による人気ミステリー「囮捜査官 北見志穂」シリーズの第4作「囮捜査官 北見志穂4」は、連続放火事件と人形連続殺人事件という二つの事件が複雑に絡み合い、昭和という時代の記憶を浮かび上がらせる作品です。
物語は、前作『おとり捜査官2ー視覚ー』(首都高バラバラ殺人事件)で凶暴な犯人を射殺した北見志穂が、その精神的ショックから軽度の神経症に陥るところから始まります。カウンセリングを受けながら回復を目指す志穂ですが、そんな折、生後2週間の赤ん坊が誘拐される事件が発生。犯人は身代金1億円を要求し、運搬役として志穂を名指ししてきます。事件の背後には、志穂の「双子の妹」とされる存在がちらつき、彼女の精神はさらに追い詰められていきます。誘拐事件の捜査と並行して、志穂が過去に担当した自殺事件の調査がカットバック形式で描かれ、複雑な真相が徐々に明らかになる構成です。
首都高速5号線、南池袋パーキングエリア。
一台のトラックがタンクローリーに衝突し、爆発炎上するという大事故が発生した。
救急隊が駆けつけると、そこには白髪の男と、焼け焦げた女の右足だけが残されていた。
男は重傷を負い、女の右足とともに救急車で搬送される。しかし、途中で車両は突如消失。
血痕だけを残し、救急隊員もろとも消えた救急車はどこへ?
その後、首都高各所でバラバラに切断された女性の遺体が次々と発見される。
やがて、被害者の身元が判明。その女性は、囮捜査官・北見志穂の大学時代の同級生だった――。
志穂は捜査に加わることとなり、事件の闇へと足を踏み入れる。
果たして、バラバラ殺人の犯人は誰なのか? 消えた救急車の謎とは?
「囮捜査官 北見志穂1」は、山田正紀が1996年に発表した長編ミステリシリーズの第一作であり、警視庁科学捜査研究所(科捜研)に設立された架空の部署「特別被害者部」を舞台に、主人公・北見志穂が「囮捜査官」として活躍する物語です。初出はTOKUMA NOVELS(徳間書店)から『女囮捜査官1ー触姦ー』のタイトルで1996年2月29日に刊行され、その後、幻冬舎文庫(1998年2月25日、サブタイトルを「触覚」に変更)、朝日文庫(2009年3月30日、タイトルを「おとり捜査官」に変更)、そして最新の徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#2>(2021年12月15日、タイトルを「囮捜査官 北見志穂1 山手線連続通り魔」に変更)と、複数回にわたり改題・再刊されてきました。
この作品は、単なる警察小説やミステリにとどまらず、「被害者学」という独自のコンセプトと、「五感」を軸にした異常犯罪の描写を組み合わせたサイコスリラーとして知られています。第一作である本書は、山手線を舞台にした連続通り魔殺人事件を扱い、フーダニット(誰が犯人か)、ハウダニット(どうやって犯行を行ったか)、ホワイダニット(なぜ犯行に至ったか)が絡み合う本格ミステリの要素を備えつつ、スピーディでサスペンスフルな展開が特徴です。
「花面祭」は、華道を舞台にした異色の本格ミステリであり、SF的な感性と幻想的な雰囲気を巧みに織り交ぜた作品です。1990年に発表された4つの短編を基に、1995年に加筆・統合されて長編として刊行されました(講談社文庫版は2002年)。物語は、華道塘松流の秘伝「しきの花」を巡る怪事件を軸に展開し、戦時中の密室消失事件から40年後の連続殺人まで、時間と空間を超えた謎解きが繰り広げられます。
『郵便配達は二度死ぬ』は、山田正紀が手がけた長編ミステリ小説。物語は、恋愛成就の伝説がある”恋想う坂”を舞台に、郵便配達員が襲撃され、さらには不可能犯罪とも思える”死体の移動”が発生するという不可解な事件を描く。
本書は〈山田正紀コレクション〉の本格推理編として位置づけられ、路上探偵、映画探偵、放浪探偵という三人の個性的な探偵たちが活躍する5つの短編を収録しています。各作品は緻密なプロットと論理的な謎解きを特徴とし、読者を知的な推理の世界へと誘います。
短編集『1ダースまであとひとつ』は、そのタイトルが示す通り、完全なダース(12)のうち、あとひとつ欠けた11篇の物語から構成されています。SF、ミステリ、時代小説、ホラーなど、多彩なジャンルが融合したこの作品集は、読者に幻想的でありながらも現実味を帯びた物語世界を提供しています。本記事では、各短編の魅力やテーマ、そして山田正紀独自の文学的表現について詳細に解説し、現代文学における本作の意義を考察します。
『灰色の柩』は、シリーズの中でも特に「見立て殺人」という手法が強調されており、これまでの山田正紀作品と共通するテーマである「人間の内面に潜む狂気」や「歴史の重み」が一層際立っている。例えば、『人喰いの時代』や『屍人の時代』といった作品では、登場人物たちの背景や社会状況が、事件の解決プロセスに大きな影響を与えていたが、本作においても同様の要素が巧みに再現されている。こうした点は、山田正紀氏が長年にわたって培ってきた物語構成の手法の集大成とも言えるだろう。